このページは、私(遠山)と同じ青山学院リズムマンドリーノ昭和45年度卒の知久幹夫氏の文献です。
知久氏は学生時代から類まれなる才能を発揮、ギター、パーカション、指揮を担当のほか多くの編曲も手がけました。
2012年にマンドリンアンサンブルヴォールテンペリーレンを立ち上げ、精力的な演奏活動をしていましたが、闘病に苦しみ2022年5月の演奏会の1カ月後帰らぬ人となりました。
音楽に対しての探究心は凄まじく、膨大な記録を残していました。
以下は彼の残した文献が、葬り去られることを憂い私のホームページにコピーしたものです。
知久幹夫 プロフィール ![]() |
本コラムは2012年にマンドリン合奏を始めたときに、基本的技術と表現方法、楽曲構造やアンサンブルに関する考え、指導方法などを知りたいと思ったのですが、まとまった文献がほとんど無く、自分で調べたり考えた事を資料としました。マンドリン合奏を始める人で参考になる事があるかと思い、掲載することにしたものです。ここではマンドリン音楽に限らず、関連するその他の音楽にも言及しています。なお、内容は適宜加筆修正予定です。
マンドリン合奏 | |
マンドリン族の楽器 | |
マンドリン族の演奏法 | |
演奏者と聴衆、演奏会場 |
日本では多くのマンドリン愛好家がいて、新たに始める人や学生時代にやっていた人が再び始める場合に楽器も買われる人が多い。楽器の価格は高いものでは100万円を越える。しかしながら楽器を選定するのに必要な詳細スペックやモデルによる構造の違い、素材による音への影響、弦やピックとの関連などの情報が少ない。カタログにも詳しいことはあまり載っていない。そこで、マンドリン各部の素材や構造、機能などの情報を整理してみた。
料理人や大工は道具の刃物を自分で研ぐ。釣りをする人は浮きや仕掛けを工夫する。裁縫をする人は針を選んだりミシンの調整をする。
マンドリンの演奏家も自分の楽器に関して、少なくとも弦の選択と弦の取り替え(駒位置調整と音程調整)は自分で出来、楽器各部の機能と正しい状態を知っておく事は必要だろう。
撥弦楽器によるオーケストラの編成
19世紀後半まで、マンドリンは室内楽的な小編成や独奏楽器として演奏され、ギター、ピアノ、ハープなどが伴奏をしていた。その後、マンドラ、マンドロンチェロ、コントラバスなど主に低音楽器が拡大され、マンドリンアンサンブル・オーケストラに発展してきた。第二次大戦後ヨーロッパでは再度小編成の方向となったが、日本では引き続き大型のマンドリンアンサンブル・オーケストラが活動している。現在の日本のマンドリンオーケストラの楽器はマンドリン2部、マンドラテノーレ、マンドロンチェロ、ギター、コントラバスの弦6部が基本である。他にマンドリン族としてマンドリュート(リュートモデルノ、リュートカンタービレ)、マンドローネ、ギター族のキタローネ、バスギターの入ることがある。ハープやピアノの入った楽譜もある。
管楽器の利用
管楽器はフルート、クラリネットが主で他にピッコロ、オーボエ、ファゴットなどの木管楽器、金管楽器はホルンが入ることがある。トランペット、トロンボーンの入るのは編曲ものを除けばコンラートヴェルキ、鈴木静一、中村弘明の大編成作品くらいだろう。曲によってオカリナ、リコーダーなどの民族楽器も利用される。
打楽器
打楽器はある物体と物体を打ち合わせて音を発する楽器であり、通常次のように分類される。
(1)一定のピッチを有する楽器と一定のピッチを有さない楽器
前者はティンパニ、グロッケンシュピール。後者は大太鼓、シンバルなど
(2)標準型の打楽器と補助的打楽器
標準型としてはティンパニ、小太鼓、大太鼓、シンバル、トライアングルなど、補助的楽器としてはカスタネット、シロフォン、ヴァイブラフォンなど。
(3)効果音
橇の鈴、ムチ、ガラガラ、ヤスリなど多くの種類がある。
(4)ラテン楽器など異国の楽器
マラカス、ギロ、ボンゴ、木魚など
マンドリンオーケストラで利用される打楽器はティンパニ、スネアドラム、シンバル、大太鼓、トライアングル、グロッケンシュピール、タンバリンが多い。その他ラテンの曲でボンゴ、コンガ、ギロ、マラカス、クラベス、シェイカー、カホン、パンデイロなど。
中・小型のマンドリンオーケストラでは打楽器の音量が大きすぎることがある。その場合はミュートをかけて調整すると良い。マンドリンオーケストラの大編成での打楽器のミュートを参照下さい。
鍵盤楽器など
ロシアものではグースリ(チターに似た楽器)ロシア式アコーディオンのバヤンなどの入ることがある。その他キーボード(シンセサイザー)、ピアノ、ハープなど。
これらマンドリンアンサンブル・オーケストラで用いられる主な楽器について、その形態・構造や基本的な演奏法、オーケストラの中での役割、利用効果などについて考える。
「マンドリンオーケストラの大編成」で紹介したように、管弦楽法(オーケストレーション)の著作者ウォルターピストンは「管弦楽法」の序文で次のように述べている。「作曲家もオーケストラ編曲者も、その技術的基礎として個々の楽器の性能や特性を知り尽くしていなければならない。また、各楽器の音を心に思い浮かべてみることが出来るようでなくてはならない。その上で、楽器を組み合わせた場合の効果や可能性、~これには音のバランス・混合音色・構造の明瞭さ等々の事項が含まれる~について学ばなければならない」、また演奏者や指揮者の重要性、レコードや放送の影響についても言及している。更に「和声学と対位法の知識を欠く者はオーケストレーションの課題を解くことは非常に困難である」と。